情報のバリアフリー

あべ やすし


ふりがなを つける

ふりがなを とる

1. はじめに

 今回は、知的障害者が中心になって つくっている新聞『ステージ』と、そのほか情報のバリアフリーについて紹介します。「これ、つかえるかも」「たしかに、わかりやすい」と実感していただけたら うれしいです。

2. わかりやすい新聞『ステージ』

 『ステージ』は全国手をつなぐ育成会が発行しています。1996年に第1号がでました。1年に4回発行で、8ページ、カラーの紙面で、漢字には ふりがながあります。わかりやすい表現で、写真や図をまじえながら編集してあります。

 じっさいに、『ステージ』の文章をよんでみましょう。ここでは、2011年新春号の第一面をみてみます。原文は、たてがきです。ふりがなは うすい緑色です。

東北新幹線が新青森までつながる

東京から
3時間ちょっとで青森へ
▼東京から東北地方に
向かって走る東北新幹線。
福島や仙台、盛岡などへ
行くときに、早くて便利です。
これまで東北新幹線の終点は
青森県の八戸駅でしたが、
新しい線路ができたので、
2010年12月4日からは
新幹線で新青森駅まで
行けるようになりました。
いまの東北新幹線には、
「はやて」という車両が
走っています。

 『ノーマライゼーション』という雑誌の2012年6月号に『ステージ』の紹介記事が のっています。『ステージ』の編集委員は、つぎのように説明しています。

 知的障害のある人は、文字にルビがふってあるだけではわかりません。わかりやすい言葉で、文章はなるべく短くすることです。また、『ステージ』は知的障害のある人が読者だからといって、子どもっぽい言葉や表現を使っていません。大人から子どもまでだれもが理解しやすい「わかりやすさ」を目指しています(小池美希(こいけ みき)、37ページ)。

 知的障害のある人に関係する国や災害などの重要な情報は、できるだけわかりやすい表現で提供してくれるといいのですが、わかりやすい表現といっても何が理解できて何が理解できないのかが問題です。それと、知的障害のある人は、個人によってそれぞれ情報を理解する能力に差があるため、全部が全部わからないとは言いきれません。

 たとえば、テレビを観たり新聞を読むなかで、それがわかる人はストレートに情報が理解できますが、わからない人は親や支援者に「これは何を言っているのですか?」と聞きます。ただそこで、解説する人がいいかげんに説明したり、説明自体を放棄することがあると、情報を得ることができなくなってしまいます。

 それを解決するには、知的障害のある人と、親や支援者の人間関係を改善していかなければなりません。それには、親や支援者が知的障害のある人の希望や気持ちを最大限に尊重して、情報を正しく得るための環境をつくってあげることが必要だと思います。

 それと、知的障害のある人のための国語教室を設けることが必要です。できるだけわからない表現をなくす努力も必要だと思います(横山正明(よこやま まさあき)、37ページ)。

 文字が苦手な人もいるので、絵文字(ピクトグラム)や写真をつかって情報提供する方法もあります。たとえば、「コミュニケーション支援ボード」があります。

3. わかりやすい ことばで情報提供―「やさしい日本語」

 『ステージ』と おなじような とりくみに、やさしい日本語があります。災害が発生したとき、最初から「外国人」に多言語で情報提供することができるわけではないので、それまでのあいだ、やさしい日本語で つたえていこうということです。やさしい日本語は、災害時にかぎらず、外国人にかぎらず、いつも、たくさんの人にとって必要なものだという声が ひろがってきています。


 NHKは、2012年4月に、やさしい日本語によるウェブニュースをはじめました。

 「NHK NEWS WEB EASY」といいます。中身は日本語なのに、ページのタイトルが なぜか英語なのが残念です。

 サイトのトップページをみると、「このサイトは、小中学生の皆さんや、日本に住んでいる外国人の方へ、わかりやすいことばでニュースを伝えるものです。NHKのやさしい日本語の研究を生かして、一般のニュースを書き換えています」という説明があります。むずかしいことばには、説明があります。文章を音声できくこともできます。年4回の『ステージ』にくらべると、ほとんど毎日更新されているところが魅力的です。


 インターネットのウェブページは、いろいろと利用しやすいところがあります。自動的に漢字にふりがなをつけることもできます。自分が みやすいように、文字の大きさをかえることもできます。文字の背景と文字の色をかえることもできます。よみあげソフトをつかって「聞いて読む」こともできます。

4. デイジー図書

 そういった技術の進歩をうまく活用している電子図書があります。デイジー(DAISY)といいます。デイジーには、音声デイジーとマルチメディアデイジーの2種類があります。音声デイジーは、デジタル録音図書のことです。よみあげのスピードをかえたり、章をとばしたりすることができます。

 マルチメディアデイジーは、文章と音声が同期されていて、音声で よみあげている部分がハイライト表示されます。カラオケの字幕のように 本をよむことができるということです。

 ユーチューブ(youtube)にマルチメディアデイジーを再生している様子を動画にしたものがあります。「マルチメディアDAISY図書再生」をみてください。

5. 2010年の著作権法改正と図書館サービス

 2010年1月に著作権法が改正されるまで、図書館で録音図書を利用していたのは、ほとんど視覚障害者にかぎられていました。いまでは、読書になんらかの困難がある人であれば、デイジーを利用することができます。ページをめくるのが大変だとか、ちいさい字が見えないということがあればデイジーを利用することができます。利用登録をすれば、「サピエ」という専用サイトから利用できます。

 著作権法が改正されるまで、一般の公共図書館で本の音訳をするには著作権者の許可をえる必要がありました(盲学校や点字図書館などでは、許可は必要なく、自由に音訳をすることができました。ただ、それが利用できるのは視覚障害者に限定されていました)。それが法改正で、公共図書館で音訳をしたり、マルチメディアデイジーを製作してもいいことになりました。図書館サービスの可能性が、ぐっと拡大されたわけです。

 たとえば、「著作権の問題」というページをみると、著作権法が改正される以前の状況が よく わかります。

 一方、「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」をみると、著作権法の改正で図書館サービスの可能性が おおきく拡大されたことが わかります。

6. テレビの問題

 本や新聞がバリアフリーになっても、そもそも本や新聞をよむ習慣がない、テレビで十分だという人もいます。興味をもてるような内容を、わかりやすい ことばで つたえる番組が もっと ふえる必要があると おもいます。

 地デジになって、字幕つきの番組が ふえてきました。ただ、字幕の字の大きさをかえたり、字幕の位置を 自分で設定したりすることができません。テレビ放送のバリアフリーは まだまだ課題があると おもいます。

7. おわりに

 情報のバリアフリーに関する とりくみは、たくさんあります。けれども、あまり知られていないことが ほとんどです。せっかく つかいやすいものが ふえているのだから、たくさんの人に つかってもらえるようにしたいです。


(2012年 9月25日 掲載)


あべ・やすし (ABE Yasusi)

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