あべ・やすし
魅力的なサイトとは、どのようなサイトだろうか。内容が充実しているサイトが人気をあつめるのは当然である。しかし、すぐさま充実した内容を準備することは むずかしい。そこで せめてリンク集だけでも充実させようとする。自分のサイトと共通したテーマをもつサイトがあれば、どんなサイトでもリンクしていくことが重要だろう。リンク集だけでも じゅうぶん情報になるからだ。
わたしはリンクは自由という立場にたつ。リンクのポリシーについては東北大学の後藤斉(ごとう・ひとし)さんの説明が すぐれている(「ウェブページのリンクおよびその他の利用について」)。リンクをするのに、リンク先に許可をもらう必要も なければ、連絡をとる必要もない。この点はサイトを運営する人であろうと なかろうと、把握しておく必要があるだろう。もちろん、どんな「常識」や「ルール」であれ、満足できない人は かならず いるものである。いわゆるエリートだけがウェブを利用していた時代をすぎた現在、全世界ではなくとも、かなりの地域でウェブの利用者は ふえてきている。それゆえリンクについても さまざまな見方が でてくるわけだ。だから論理ではなく「感情論」で「無断リンク」を批判する人も でてきて当然なのであって、そういった「感情論」を安易に批判しても しかたが ない(ここで「感情論」というレッテルに反感をもつ人が、かならずいるだろう)。
リンクをしたことを連絡する必要はない。だが、リンク先に自分のサイトのページをリンクをしてもらうために、「リンクしました」と連絡することが ある。これは、にたような関心をもつ人たちとの交流にもなるわけであり、リンクの連絡で つきあいが はじまることも ある。ウェブページのリンクによって人と人が「つながる」ことが できる。これこそがウェブにおけるコミュニケーションの醍醐味(だいごみ)といえよう。
リンク集をつくるということは、「リンクするサイト」と「リンクしないサイト」を選別するということでもある。もちろん、すべてのウェブページを参照したうえでリンク集をつくるわけではない。だから、自分が しりえた範囲で「選別」することになる。自分の「お気に入り」だけをリンクするというのなら、はなしは単純である。だが、自分のサイトを共通のテーマをあつかうサイトをリンクしていこうとすれば、自分のサイトとは決定的に意見が対立しているサイトをどうあつかうのか、という問題がでてくる。このサイトでいえば、リンク集といえるのは、日本語のページでは「いろんなサイト」と、「よみかき研究」である(よみかき研究のページでは文献目録のうち、サイトを運営している著者にはリンクをはっている)。後者の場合はともかく、2005年4月6日現在「いろんなサイト」では、基本的に わたしが賛同していて、紹介したいと おもうサイトだけにリンクをはっている。だが、これでは なにかテーマをかかげるサイトとして、おもしろみに かけるだろう(このサイトのテーマは、文字、ことば、からだ、社会、人権などである)。
たとえば、巨大掲示板として有名な2ちゃんねるにも、たとえば日本語表記についてのスレ(スレッドの略語)がある。このサイトを紹介しているスレもある。だが、スレのタイトルや かきこみのなかに個人をおとしめる表現がある場合、そこにリンクをはるのは はばかられる。すくなくとも、わたしはリンクしない。2ちゃんねるにおける議論は、注目すべきものも あれば、そうでないものもある。あきらかに悪意のある かきこみは削除(「あぼーん」)されるが、中傷している程度では削除されないし、その必要もないだろう。だが、中傷があれば、わたしはリンクしない。そしておそらく、中傷のないスレはない。わたし個人は2ちゃんねるをよく参考にしている。だが、それを紹介するかどうかは、べつの問題であるということだ。これは2ちゃんねるだけの話ではない。議論のためではなくて非難、中傷をしているサイトは、いかにテーマが共通していようとも、リンクしにくいものである。しかし、そんなことばかり いっていても、つまらないのではないだろうか。たとえ中傷があったとしても、読者の良識さえ信用できれば、なにも問題はないという見方もできるのである。
リンクをはりめぐらしていくことで、ウェブ上の文書は いきてくる。自分のサイトもしかり、リンク先もしかりである。ウェブを利用すれば いとも かんたんにネットワークをつくることが できる。まずこの利点を評価する必要がある。そして、リンクをさらに活用することで、ウェブ上で議論をふかめていくこともできるということを評価し、実践していくことが重要だといえよう。ウェブは、さまざまな可能性をひめている。しかし、自分の姿勢によってその可能性を半減させているということも ありうる。リンクをするということは、リンクをしないサイトを選別することでもあるのだということを、まず第一に自覚しておく必要がある。これは、わたし自身に対する自戒をこめた結論である。
2005年 4月7日
あべ・やすし (ABE Yasusi)
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