あべ やすし 2013 「金融機関の窓口における代読・代筆について―公共性とユニバーサルサービスの視点から」『社会言語学』13号、59-83ページ(PDF版



金融機関の窓口における代読・代筆について
―公共性とユニバーサルサービスの視点から―


あべ やすし


日本自立生活センター非常勤職員(介助者)

愛知県立大学非常勤講師

識字研究・障害学

abeyasusi@gmail.com

http://www.geocities.jp/hituzinosanpo/


もくじ

1. はじめに

2. 金融機関における代読・代筆の位置づけ

2.1. 障害者運動と金融庁の働きかけ

2.2. 金融庁「監督指針」改正の背景

2.3. 金融庁「監督指針」改正の内容

2.4. 金融庁「監督指針」改正以後の変化

2.5. 各金融機関のとりくみの現状

2.5.1. 金融庁によるアンケート

2.5.2. ウェブサイトでの説明

3. 代筆以外のとりくみ

4. 認知されていない非識字者のニーズ

5. おわりに―代読・代筆をすべての窓口で

参考文献




1. はじめに


 本稿の目的は、情報保障と識字研究の視点から、金融機関の窓口における代読・代筆の位置づけと規定に注目し、現状と課題について整理することである。

 わたしはこれまで、あべ(2010a、2010b、2010c、2012)などの論考で、文字がよみかきできなくても社会生活に困難が生じないような社会のしくみが必要であることを論じてきた。なかでも、あべ(2010b)では、文字のよみかきが(ほとんど)できない人には代読と代筆が必要であることを指摘し、一部の公共図書館で実施されてきた「文字情報サービス」をとりあげた。代読や代筆は、プライバシーと専門性の面からいって、「だれがしてもいい」というものではない。技術や倫理がもとめられる。

 現在、この代読・代筆に関して、その重要性が各方面で認知されはじめている。あべ(2010a、2010b、2010c)を収録した『識字の社会言語学』(かどや/あべ編2010)が出版された2010年12月に、読書権保障協議会が結成された。この団体は、2012年に『高齢者と障害者のための読み書き〈代読・代筆〉情報支援員入門』と『読み書き《代読・代筆》情報支援テキスト』を出版した。この2冊は「読み書き(代読・代筆)情報支援員」を養成し、情報支援のとりくみを社会にひろく普及するためのものである。

 田中章治(たなか・しょうじ)は、「読書権保障協議会がめざすもの」として、団体の活動内容と社会状況をつぎのように説明している。

 2010年12月、私たちは、「すべての人が読書・読み書きできる社会づくり」をめざして、大活字文化普及協会内に「読書権保障協議会」と言う専門委員会を立ち上げた。そして、私たちの活動の一環として、昨年[2012年のこと―引用者注]8月10日には、千代田区立日比谷図書文化館において、「読み書き情報支援事業の全国普及促進シンポジウム」を開催した。ここで私たちは、全国に向け、「すべての人が読書・読み書きできる社会作りを」というアピールを発表した。…中略…

 当日、このシンポジウムに参加された主要6政党の代表から、このアピールに異口同音に、賛意が表明されたことは大変心強かった。その後、これを契機に、私たちの活動と関係者の理解と協力があいまって、いくつかの前向きな取り組みが現れてきていることは喜ばしい。文部科学省では、公立図書館における対面朗読サービスにおける利用者の持参資料の利用促進のための大臣告示が出され、金融庁においては、銀行窓口での利用者への読み書き支援を促す監督指針が出された。また、厚労省でも、障害者に対する地域生活支援事業の中の「意思疎通支援事業」に、「読み書き(代読・代筆)」の項目が新たに追加された…後略…(おおが ほか2013:5-6)。

 このような状況は、文字のよみかき(識字)をめぐる社会制度が改善されつつあることをしめしている。その変化に注目し、さらなる変革につなげるために、本稿では金融機関のとりくみに注目したい。

 金融業界はさまざまな雑誌を発行しており、全国銀行協会が運営している銀行図書館という専門図書館もある。文献調査をするのに必要な文献は豊富にあるといえる。公共性や社会的責任という点でも、金融機関は重要な位置にある。

 以下では、金融機関の窓口における代読・代筆に焦点をしぼり、その論点と課題を整理してみたい。


2. 金融機関における代読・代筆の位置づけ


 まず、金融機関の窓口において代読・代筆がどのように規定されてきたのか、そしてどのような改善が必要であると提起されてきたのかについて確認する。そして現在、代読と代筆が個々の金融機関でどのように規定されており、どのように実施されているのかについて注目する。そして代読や代筆に関する課題を整理する。


2.1. 障害者運動と金融庁の働きかけ


 金融業界の雑誌をみると、バリアフリーについてさまざまな特集をくんでいる。たとえば以下のような特集号がある。年代順にならべる。

 記事をかいているのは、銀行に勤務している人、掲載雑誌の編集委員、そのほか障害当事者や研究者である。

 ここではまず、竹下義樹(たけした・よしき)による「【視覚障害者の声】金融庁の働きかけで金融機関の取組みが加速」という記事をみてみよう(たけした2011)。竹下は「日本盲人会連合副会長」であり弁護士である。

 竹下は障害者運動と金融庁の働きかけについて、つぎのように説明している。

 全国の視覚障害者団体で構成する日本盲人会連合(日盲連)の全国大会で、毎年、金融機関に対して代筆、代読などバリアフリーの制度化を求めてきた。自見金融担当大臣の就任や総務省の行政苦情救済推進会議の意見などをきっかけに、金融庁の金融機関への働きかけが積極的になり、取組みが加速したと感じている。各財務局では、各地の視覚障害者団体と地元の金融機関との間で話合いがもたれ、共通認識を醸成できた。

 金融機関の視覚障害者への対応は、銀行同士、または同じ銀行内でも支店や担当者によって異なることもあり、統一されていなかったのがいちばんの課題だ。視覚障害者の利便性の向上に積極的な金融機関は、担当者が視覚障害者の自宅まで訪問して集金や払出しをする例もあれば、他方では障害者に対して「代筆者は自分で用意しなさい」「代筆は委任状を提出しなさい」といった対応が厳しい金融機関もある。金融機関の行職員のなかに視覚障害者に対して何とかしてあげたいという善意の気持ちがあっても、例外的に視覚障害者に対して特別な便宜を図れないと聞いている。今回の監督指針の改定は、視覚障害者向けの対応を統一化し、ひいては善意ある行職員の身を守ることにもつながる解決策だと考えている(1)(同上:16-17)。

 この説明をみると、視覚障害者の当事者団体が金融機関や関連省庁に何度もアピールしてきたこと、その成果として、金融庁の監督指針の改訂があることがわかる。

 総務省は、2010年8月24日に、「行政苦情推進会議の意見を踏まえたあっせん(視覚障がい者に対する金融機関職員による代筆の推進)」という趣旨のあっせんを金融庁に対して実施した。あっせんの文書によると、それは総務省に提出されたつぎのような申出にもとづくものである。

視覚障がい者の方が、金融機関で口座開設をするため、身体障害者手帳と印鑑を提示した上で、窓口職員に申請書の代筆を頼んだところ、自筆が原則だと断わられ、口座開設をあきらめざるを得なかった。しかし一方では、視覚障がい者が代筆を申し入れた場合、代筆をしてくれる金融機関もある。身体障害者手帳等の本人確認資料を提示していれば、住所、氏名は確認でき、自筆、代筆どちらでも支障はないように思われる。視覚障がい者の方が金融機関窓口で代筆を求めた場合には、どこの金融機関でも応じられるようにしてほしい。

 総務省からのあっせんをうけ、金融庁はどのような対応をとったのか。その後の「金融監督行政」のうごきを、松尾直彦(まつお・なおひこ)はつぎのようにまとめている。

(1) 「視覚障がい者に配慮した取組みの積極的な推進に係る要請」(10年8月26日)

(2) 平成22年事務年度監督方針における態勢整備(10年8月27日)

(3) 金融庁における「視覚障がい者団体と金融機関との意見交換会」の開催(10年9月8日)

(4) 「視覚障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果(速報値)」(10年11月30日)

(5) 主要行等向け及び中小・地域金融機関向けの監督指針の一部改正案(10年12月28日) (まつお2011:18)

 このような働きかけがあったため、金融業界の雑誌でも2011年以降、代読や代筆に関する記述が増加している。さらに、2011年4月15日に金融庁は「「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について」を発表した(http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20110415-2.html)。


2.2. 金融庁「監督指針」改正の背景


 このように、2010年から2011年にかけて、視覚障害者への対策がおおきく進展した。それでは、それ以前はどうだったのだろうか。それまでは金融機関における代読や代筆はどのように規定されていたのだろうか。金融機関のコンプライアンスを解説した本や記事の内容を確認してみよう。

 まず『コンプライアンスのための金融取引ルールブック第13版』の記述をみてみよう(あまみや/のむら編2008)。

 「代筆による高齢者預金の払戻請求」という項目では、はじめにつぎのように記述している。

 代筆による預金払戻は消極扱いなのはいうまでもない。しかし、高齢により手や目が不自由で伝票の記入もおぼつかない場合、代筆による預金の払戻請求に応じなければならないとき、同行の健常者による代筆とする。少なくとも金融機関職員による代筆は絶対に避けなければならない(同上:272)。

 なぜか。「解説」の一部を引用すると、「代筆による払戻請求においては、預金者が作成した払戻請求書等を提示して払戻を受けるという免責規定適用の前提を欠くため、金融機関は免責規定の適用を受けられないのではないかとの疑念が残る」という理由である。「自署は契約の基本」であり「本人意思確認の基本」であるとしている。そして「金融機関の職員が代筆をするなどは厳禁であり、百害あって一利ないことを肝に銘ずるべきである」とまで主張している(同上)。利用者側の権利はまったく考慮されていない(2)

 ほかにも、利用者の代筆依頼に職員が「安易に」応じることをいましめる解説がいくつも確認できる。

 『金融機関窓口コンプライアンスその窓口業務は法令等遵守違反です』では「ケース9 お客さまからの代筆依頼「払戻請求書を代筆してほしい」」で、窓口職員による代筆について解説している(おざわ2007:34-37)。

 解説をみると「お客さまからの依頼に応じて、独断で代筆を応諾している点がコンプライアンス違反です」としている。「なぜ違反?」として、つぎのように解説している。

 払戻請求書は、金融機関が預貯金を払戻したことを証する書面になります。したがって、払戻請求をされるお客さま自身に必要事項を記入していただくべきで、金融機関の職員による代筆はしないことを原則とすべきです。また、お客さまのなかには、払戻しの事実を忘れてしまう方もいます。金融機関の職員が安易に払戻請求書を代筆すると、後日、本人から「この払出しの記憶はない」といった照会を受けた場合、金融機関が本人に対し、本人の意思に基づく払戻しを行ったことを説明し、理解を得るために多大な労力を費やすことになります。

 このような事情から、一般に、金融機関の内部規定では、お客さまからいただく書類を金融機関の職員が代筆することを、原則として禁止しています(同上:36)。

 そして、「代筆で対応せざるをえない事情」がある場合には、つぎのような対応が選択肢としてあると説明している。

(1) 本人の身内等に付き添いを求め、本人の納得を得て付添人に代筆をしていただく。

(2) 金額や名字だけなど、お客さまが記入できる範囲は記入していただき、そのほかは理由を記録したうえで金融機関の職員が補記する。

(3) 全面的に金融機関の職員が代筆せざるをえない場合には、役席を含む数名の立会いのもと、本人の意志を確認し、理由を記録したうえで代筆を行う(同上:36-37)。

 そして、とるべき対応として、つぎのように説明している。

 払戻請求書の代筆を依頼された場合には、漫然と応じるべきではありません。

 どうしても代筆しなければならないと思われる場合は、各金融機関の内部規定を確認し、後日のトラブルを避けるためにはどのような対応が望ましいか、役席者ともよく相談のうえ、対応方針を決めるべきです(同上:37)。

 ほかにも、『わかりやすい金融窓口サービス』では「時間が経過すると、代筆を「依頼された」、「依頼していない」など、水掛け論となる可能性があるため、どんな場合でも伝票の代筆は回避すべきです」と解説している(かとう2003:54)。そして「やむをえないと思われるケースでは、単独処理することなく、役席者に事情を報告し、その指示により取り扱うことが必要です」としている(同上:55)。

 このように、以前は金融機関の職員による代筆についてかなり消極的だった。その理由は、金融機関にとってトラブルの原因になるから、というものだった。金融機関の公共性やサービスの公平性という視点はほとんどなかったといえるだろう。

 水野映子(みずの・えいこ)は、「対面・非対面窓口の障害者等にとっての不便さ―一般消費者・聴覚障害者・視覚障害者を対象とするアンケート調査結果より」という記事で「視覚障害者が諸手続きの際に読み書きに関して感じた不便さ」をとりあげている。水野はつぎのように説明している。

…書類が書けない場合に代筆を頼むことに関する不便さは特に多い。例えば金融に関する手続きなどでは、代筆が認められなかったり家族などの代筆者の同行を求められたりすることがある。その場合、うまく書けなくても無理して自分で書いている人や、遠方に住む親に来てもらっている人もいる。また、代筆の手続きが煩雑であることや、代筆に関する対応が統一されていないことへの不満もあげられている(みずの2010:12)。

 このような状況を改善するために、金融庁は「主要行等向けの総合的な監督指針」と「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を改正したのだといえるだろう。


2.3. 金融庁「監督指針」改正の内容


 2011年の金融庁「監督指針」の改正では、「障がい者等に配慮した金融サービスの提供」という項目が新設された。

 はじめに「障がい者等に配慮した金融サービスの提供」の「意義」として、つぎのようにのべている。

 銀行は、成年後見制度等の対象でなく意思表示を行う能力がありながら、視覚・聴覚や身体機能の障がいのために銀行取引における事務手続き等を単独で行うことが困難な者(以下「障がい者等」という。)に対しても、視覚や聴覚に障がいのない者等と同等のサービスを提供するよう配慮する必要がある。

 このため、各銀行においては、障がい者等に関する法令等を遵守するとともに、平成22年[2010年のこと―引用者注]8月26日付で金融庁監督局長が金融機関業界団体等に対して発出した要請文「視覚障がい者に配慮した取組みの積極的な推進について」に示された「視覚障がい者対応ATMの増設」や「複数の行員の立会いによる視覚障がい者への代筆及び代読の規定化並びに円滑な実施」など、視覚障がい者からの要望等を踏まえた取組みを積極的に推進するよう努めることが重要と考えられる(3)

 それでは本稿のテーマである代筆と代読についての記述をみてみよう。まず、「自筆が困難な障がい者等への代筆について」は、つぎのようにのべている。

 障がい者等のうち自筆が困難な者(以下、「自筆困難者」という。)から、口頭で預金口座開設等の預金取引や融資取引の申込みがあった場合、以下に示す自筆困難者の保護を図ったうえで、代筆を可能とする旨の社内規則を整備し、十分な対応をしているか。

 なお、自筆困難者からの当該申込みは「口頭による意思表示」に当たると考えられるため、取引関係書類への代筆は、当該申込みに係る意思表示の範囲内に限られることに留意する必要がある。

イ. 預金取引の場合

 a. 自筆困難者が、預金取引に関して意思表示した内容を次に掲げる者に代筆を依頼した場合、依頼を受けた者による代筆が可能であることを定めているか。

i) 自筆困難者と同行した者(注1、注2、注3)

ii) 銀行の職員(複数の職員が確認するものとする。)

(注1)自筆困難者が来行せず、当該者からの依頼を受けたとする者のみが銀行に訪れた場合、自筆困難者本人に対して、当該来行者への代理権授与の意思や取引意思を確認することとしているか。

(注2)自筆困難者が単独で銀行に訪れた場合は、上記i) の者との再度来行を求めるのではなく、銀行の職員が代筆することとしているか。

(注3)自筆困難者が、例えばヘルパー等の同行者に、代筆を依頼する意思がない場合、当該同行者へ代筆を依頼するよう求めるのではなく、銀行の職員が代筆することとしているか。

 b. 上記a. の社内規則等に、少なくとも以下のことを代筆の際の手続きとして定められているか。

i) 自筆困難者の意思表示の内容を記録として残すこと。

ii) 親族や同行者が代筆した場合は、銀行の職員が複数で代筆内容を確認し、確認した事実を記録として残すこと。

iii) 銀行の職員が代筆した場合は、複数の職員が確認したうえで、その確認をしたという事実を記録として残すこと。

ロ. 融資取引の場合

 自筆困難者が、融資取引に関して意思表示した内容について、推定相続人や第三者保証提供者なで返済義務を承継する可能性のある者(自筆困難者と同行した者に限る。以下「同行推定相続人等」という。)に代筆を依頼した場合、当該依頼を受けた者による代筆が可能とすることを定めているか。

 その際、少なくとも以下のことを社内規則に定めているか。

i) 自筆困難者の意思表示の内容を記録として残すこと。

ii) 同行推定相続人等が代筆した場合は、銀行の職員が複数で代筆内容を確認し、確認した事実を記録として残すこと。

iii) 同行推定相続人等以外の者による代筆を認める場合、複数の職員が立ち会い確認したうえで、その確認をしたという事実を記録として残すこと(注)。

(注)同行推定相続人等がいない場合であっても、そのことのみをもって融資を謝絶すると、自筆困難者の自立した日常生活及び社会生活の確保を困難にさせるおそれがある。

 このため、銀行は、自筆困難者の日常生活や社会生活を確保する観点から、公証人制度の利用や弁護士の立会いを求めるなどの解決策を検討することが重要と考えられる。また、当該対応策による融資の際は、銀行の本部や地域本部等の権限のある役席者が確認する態勢を設けるなど、後において、債務の存否を争うようなトラブルが発生しないよう留意する必要があると考えられる。

 代読については、つぎのようにのべている。

(2) 視覚に障がいがある者への代読について

 視覚に障がいがある者から要請がある場合は、銀行の職員が、当該者に係る取引関係書類を代読する規定を整備しているか。その際、個人情報の漏洩を防ぐとともに、複数の職員が代読内容を確認し、その確認をしたという事実を記録として残すこととしているか。

 つまり、この「障がい者等に配慮した金融サービスの提供」のポイントは、社内規則を整備し対応することに着眼点をおいている。

 つぎに、監督指針の改正ついての解説記事をみてみよう。

 まず、金融庁監督局銀行第一課課長補佐の森陽介(もり・ようすけ)による解説記事がある(もり2011a、2011b、2011c)。とくに融資取引についての解説が参考になる。森は融資取引の代筆規定についてつぎのようにのべている。

…融資取引については、債権者である金融機関の職員が、債務者である視覚障がい者の代筆を行うことは、民法上の双方代理(注:同一人が同時に当事者双方の代理人となって契約を締結すること)に類似した問題を誘発すること、詐欺や横領事件の発生などコンプライアンス上の問題も多いことから、まずは推定相続人や保証人による代筆を原則とすべきとしました。ただし、推定相続人や保証人がいない場合は融資を受けることができないというのでは、日常生活を営むのに支障がでるおそれがあることから、そのような者にも融資できる態勢が整備されているかを監督上の着眼点としています(もり2011a:46)。

 この解説によって、民法との整合性という論点が確認できる。また、職員に代筆を依頼するときに、職員が不正をおこなう可能性を無視できないという論点も確認できる。森はべつの解説記事でつぎのようにのべている。

…同行推定相続人等がいない場合であってもなんらかの解決策を検討するよう求めている。例えば、公証人制度の利用や弁護士の立会いが考えられる。当該解決策実施の際は、銀行の本部や地域拠点等の権限のある役席者などによる確認態勢を構築して牽制機能を強化するなど、後にトラブルや不祥事件が発生しないよう留意していただきたい。ある銀行では、職員が公証制度を悪用し、障がい者等と偽の融資契約を締結し、融資金を搾取したという事件も起こっているので、そうした事件の防止も必要であろう(もり2011b:23)。

 「弁護士の立会い」については、だれがその費用を負担するのかという問題がある。

 そもそも、民法の契約に関する規定が「自筆できる」ことを自明視している点に問題があるといえる。だとすれば、国が責任をもって解決すべき問題ではないだろうか。障害者個人や各金融機関だけの問題ではないはずである。

 森の解説記事のほかには、弁護士による解説記事「障がい者等に配慮した取組みをどう進めるか―代筆・代読の取扱いを中心に」がある(おだ/きやま2011)。この記事では公証人や弁護士の関与について、つぎのようにのべている。

…公証人の関与については、例えば私署証書の認証、金銭消費貸借公正証書や委任状公正証書の作成などが考えられる。

 また弁護士の関与については、代筆の状況を確認・認証する役割のほか、本人から委任を受けている場合には、代理人として署名することもあり得る。金融機関においてはこれら公証人制度や弁護士の役割について、本人に対して正確な説明を行うことも、今後は必要になってくるのではないかと思われる。ただ、いずれにせよ公証人制度の利用や弁護士の立会いについては、費用負担の問題(注6)の問題が生じ得るところ、本人に対しどの程度の負担割合を求めるかについては、今後の検討課題となろう(同上:95)。

 この「注6」では公証人を依頼したときの手数料について解説している。

 公証人に公証事務を嘱託したときは手数料を支払わなければならない。例えば、委任状公正証書の場合は7000円であり、金銭消費貸借公正証書の場合は借入金額に応じて計算される。私署証書の認証の場合は、原則として、上限1万1000円である。なお、公証人が出張した場合の日当は1日2万円(4時間以内の場合1万円)である(同上:97)。

 ここで問題になるのは、書類のよみかきに困難のある人だけがこのような費用を負担しなければならないという点にある。


2.4. 金融庁「監督指針」改正以後の変化


 つぎに、金融庁「監督指針」改正以後の変化に注目してみよう。ここでは関連書籍や雑誌記事の記述に注目する。

 まず、2.2でとりあげた『コンプライアンスのための金融取引ルールブック』の第14版をみてみよう(あまみや/のむら2012)。第14版では代筆について、「自筆困難な障がい者との預金取引における代筆・代理の問題点」と「自筆困難な障がい者との融資取引と代筆・代理の問題点」でとりあげている。

 まず、「預金取引」についての解説をみると、小田大輔(おだ・だいすけ)は「代筆による取引を可能とするための態勢整備は銀行の責務」であるとし、その根拠を「銀行の公共性や社会的責任(CSR)」においている。そして「障がいのない顧客と同等のサービスを提供するよう配慮する必要がある」とし、代筆について態勢を整備する根拠として「中小監督指針II-7」をあげている(同上:118)。2008年の第13版とは、まったく内容がことなっている。監督指針の改正の影響力がうかがえる。

 つぎに、「融資取引」についての解説をみてみよう。丸山幸朗(まるやま・ゆきお)はつぎのように説明している。

 銀行は、視覚・聴覚や身体機能の障がいのために事務手続等を単独で行うことが困難な者(以下「障がい者等」という)に対しても、同等のサービスを提供するよう配慮する必要がある(中小監督指針II-7-1)。このため、法令等を尊守し、平成22年[2010年のこと―引用者注]8月26日付で金融庁監督局長が発出した「視覚障がい者に配慮した取組みの積極的な推進について」に示された「複数の行員の立会いによる視覚障がい者への代筆及び代読の規定化並びに円滑な実施」などに取組むことが重要である(同上:192)。

 このように、『コンプライアンスのための金融取引ルールブック』の第13版と第14版では、「コンプライアンス」の意味あいがおおきく変化している。

 ただ、第14版の「高齢者との融資取引」についての説明をみると、「解説」のトピックは「行為能力の確認」「意思能力の確認」「法定後見制度の活用」となっている(同上:195-197)。書類のよみかきにだけ困難のある高齢者の存在はほとんど想定されていない。「対策」の部分では、「代筆に頼る場合の対応」についても、「検討し理解しておかなければならない」ことの一つにあげている(同上:197)。逆にいえば、代筆についての言及はそれだけである。

 つぎに、『バンクビジネス』の特集「営業店で取り組むユニバーサルサービス」に掲載された「マンガ ユニバーサルサービスの基本とお客様対応」をみてみよう。ここでは、「金融機関は多くの人が利用する公共性の高いところ」であるため「お客様にとって不便さを感じさせないような営業店づくりをしていくのはとても大切なこと」だと説明している(バンクビジネス編集部2011:9)。そして、「金融庁の監督指針にも「障がい者等に配慮した金融サービスの提供」という項目が設けられた」ことをとりあげ、「この項目の意義は視覚や聴覚・身体に障がいがあり単独で取引が困難な人に障がいのない人と同等のサービスを提供するよう配慮するということ」だと説明している(同上:11-12)。


2.5. 各金融機関のとりくみの現状


 竹下は、さきに引用した記事で金融庁「監督指針」改正以後の変化について、つぎのようにのべている。

 各地では、金融機関の対応がよくなったという声が早くも聞かれるが、金融機関によって対応のばらつきを懸念している。6月の日盲連の全国大会では、各地域における金融機関の対応状況を報告し、対応の統一化を確立したい。…後略…(たけした2011:17)

 理想をいえば、全国どの金融機関でも、代読や代筆を依頼できるという状況がのぞましい。そうした状況にしていくためにも、現在それぞれの金融機関が代読や代筆についてどのようにとりくんでいるのか、確認してみる必要がある。

 そこで以下では、各金融機関のとりくみの現状を確認する。とくに、だれが代読や代筆を利用できるのかという対象者の問題と、どこまで代筆に対応するのかという取引内容の問題に注目する。


2.5.1. 金融庁によるアンケート


 まず、おおまかな状況を確認するために、金融庁によるアンケート調査の結果をみてみよう。金融庁は、「障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査」を実施し公表している。2013年に公表されたアンケート4は2013年3月末時点での状況をしめしている。アンケートの対象は、主要行等16行、信託銀行5行、地方銀行等65行、第二地方銀行41行、信用金庫270金庫、信用組合157組合、労働金庫13金庫である。

 「預金取引に係る自筆困難者への代筆に関する内部規定の整備状況について」をみると、つぎのような結果がでている。

主要行等   約81%(約92%)

都市銀行等  100%(100%)

信託銀行   100%(100%)

地方銀行等  100%(100%)

第二地方銀行 100%(100%)

信用金庫  100%(約100%)

信用組合  約99%(約99%)

労働金庫  100%(100%)

(注1)( )内の数値は、規定を策定済みの先のうち、職員による代筆規定の整備率

 ほとんどの金融機関で代筆に関する内部規定をもうけていることがわかる。しかし、その内実については確認できない。


2.5.2. ウェブサイトでの説明


 ウェブを検索すると各金融機関における代読・代筆の実施内容をみることができる。

 今回、代読や代筆について明記している金融機関のウェブページを41(28の銀行、10の信用金庫、3つのJA)確認することができた。

 まず、代読や代筆の対象者として、だれを想定しているかに注目したい。

 ウェブサイトで高齢者への代読・代筆を明確に明記しているのは、三菱UFJ信託銀行と平塚信用金庫だけである。そのほかは、「視覚障がい者等」と幅をもたせている例と「目と手が不自由なお客様」というような表現で障害者を対象にしている例と、明確に視覚障害者に限定している例がある。

 ここでは、高齢者も代読・代筆の対象にしている三菱UFJ信託銀行と平塚信用金庫の説明を確認しておきたい。

 三菱UFJ信託銀行は「お客さま満足向上への取り組み」というページで「視覚障がいのお客さまへのサービス」について、つぎのように説明している(URLは参考文献の「参照ウェブページ」を参照)。

三菱UFJ信託銀行では、視覚障がいのあるお客さまの利便性を向上させる取り組みを進めています。

ATMのご利用が困難なお客さまには、音声案内に従った操作で普通預金の入出金や残高照会などを行うことができるハンドセットホンをご用意しています。なお、ハンドセットホンでは振込手続きができないため、窓口でお振込みを行う場合のお振込手数料を、ATMご利用時と同額に引き下げています(ATMでのお取引が可能なお振込の手続きが対象となります)。

また、書類の読み取りや記入が困難なお客さまには、従業員が立会いのもと、代読や代筆をいたします。各拠点では勉強会を実施し、ルールの明確化とサービスの徹底に努めています。なお、代筆・代読のサポートは、ご高齢のお客さまや自署が困難なお客さまも対象としています。

 この説明では、代読・代筆を実施する取引の範囲は明記されていない。

 平塚信用金庫は「障がいをお持ちのお客さまやご高齢のお客さまへの対応について」というページで、つぎのように説明している。長文になるので、ここではATMと代読・代筆についての規定をみてみよう。

2. 音声案内機能付ATMを設置しています。

ATMに取り付けられた受話器から音声ガイダンスが流れ、受話器にあるプッシュボタンを押すことにより、ATMでお預入れ、お支払い、残高照会、通帳記入の操作が出来ます。

※平成23年5月26日に全店舗への設置を完了いたしました。使用方法等にご不明の点がございましたら、係員にお問合せください。

3. 新規口座開設やお預入れ、お支払い等で当金庫職員が代筆いたします。

目や手が不自由なお客さまやご高齢でご本人による伝票等への記入が困難な場合、役席者を含め複数の職員の立会いのもと、当金庫職員が代筆をいたします(顔写真付きの公的証明書類によりご本人の確認が必要になります)。

【対象取引】

新規口座開設、預金払戻、解約、入金、キャッシュカードの発行、振込、両替、税金・公共料金納付、各種届出

※融資取引、当座勘定取引等の与信取引や保険商品への加入や投資商品購入等の金融商品取引法対象取引等は職員の代筆の対象外とさせていただきます。

4. お取引内容の代読をいたします。

お通帳の提示を受け、口座の入出金等のお取引内容を知りたい旨のお申し出を受けた場合、職員が代読いたします。なお、代読の際には、お客さまのプライバシー保護には十分配慮いたします。

5. 窓口での振込手数料を減免いたします。

目や手が不自由なためにATMで振込手続きができない場合は、窓口でATMによる振込手数料と同額で振込手続きをお受けいたします。また、窓口では振込依頼書の代筆も受付けますが、その場合には顔写真付きの公的証明書類によりご本人の確認が必要になります。

 代筆を実施する範囲(取引内容)を明確に明記している点が評価できる。ただ、もっといえば「職員の代筆の対象外」にする理由について、きちんと説明するべきだろう。

 また、対象外にする是非についても、検討しつづける必要があるだろう。

 つぎに、代筆に対応する取引内容の範囲を明記している金融機関をあげると、平塚信用金庫のほかに、名古屋銀行、北陸銀行、八十二銀行がある。

 名古屋銀行は、代筆について、つぎのように説明している。

目や手が不自由でお客さまが自筆できない場合、お客さまのご親族の方による代筆のお取扱いをしています。また、同伴者がいらっしゃらない場合は融資関連取引を除き、行員による代筆をさせていただきます。

 北陸銀行は、つぎのように「行員による代筆」の範囲を明確に明記している。

[対象取引]

新規口座作成、預金払戻・解約、入金、キャッシュカード発行、振込み、両替(円貨)、喪失届、改印届、住所変更届、名義変更届

[対象外取引]

融資取引、当座勘定取引、投資商品購入等、与信取引・金商法対象取引などは対象外とする

 八十二銀行は、「代筆の取扱」をつぎのように説明している。

・入出金や振込などについて

視覚障がい等の身体障がいなどにより各種書類への自署が困難なお客さまにつきましては、当行職員が代筆のうえお手続いたします。

・お借入について

視覚障がい等の身体障がいなどにより各種書類への自署が困難なお客さまにつきましては、配偶者や同居のご親族の方による代筆にてお手続いたします。

 そのほかには、豊橋信用金庫は融資についてつぎのように言及している。

目や手などが不自由な方から代筆・代読依頼があった場合の対応として、職員や親族等による代筆・代読ができるように「預金共通事務手続」や「融資共通事務手続」を改正し、手続に則って丁寧でスムーズに行うよう職員に周知しています。

 融資取引で具体的にどのような対応をとっているのかは明記していない。

 このように、だれが代読や代筆を必要としているのかについて認識が不統一であることがわかる。また、融資取引については消極的であることがわかる。


3. 代筆以外のとりくみ


 同伴者による代筆や職員による代筆についての規定だけでなく、書類をよみかきしやすいように配慮する必要もある。たとえば、「記入ガイドの提供」「用紙の拡大」「タブレットの活用」などの実践例がある。これらの対応は、障害者だけでなく高齢者のことも念頭においている様子がうかがえる。それぞれ確認してみよう。

 まず、当事者の意見をみてみたい。

 武者圭(むしゃ・けい)は視覚障害者の立場から、つぎのようにのべている。

 窓口では、伝票の記入箇所が分からない。記入欄が見えていたとしても、例えば10万円と記入するのにも視野が狭いため、十と一の位の欄しか見えない人もいる。また、色覚障害の方にとっては、「こちらの赤い枠の中をご記入ください」と言われても分からない場合もある。

 筆者は手で誘導してもらえれば、なんとなく勘で記入することができるが、これも人によって様々である。見えないイコール書けないと判断しないでほしい。…後略…(むしゃ2008:17)

 おなじく原利明(はら・としあき)はロービジョン者(弱視者)の立場からつぎのようにのべている。

 どのようなサポートが必要かといえば、例えば、番号札発券機の操作、書類記入などである。更に書類の文字や記入欄の大きさ、コントラストへの配慮に加え、記入台への照明スタンド、ルーペ、記入ガイド用の定規などが用意されていると、自力で利用できる人が増える。

 また、ローンなどの契約書は墨字では読めない人もいるので、自分で見やすいようにカスタマイズしたパソコンなどを利用して書類を読める仕組みがあると、自分できちんと確認ができ、安心感が向上する。他にも多くの不便さはある(はら2008:26)。

 パンフレットや記入用紙の拡大については、いくつか実践例が報告されている。

 まず、みずほ銀行のとりくみをみてみよう。望月昭人(もちずき・あきひと)はつぎのように説明している。

 パンフレットは、大きな文字と図版を取り入れ、読みやすさと理解しやすさから改良を加えている。例えば、みずほマイレージクラブのパンフレットについては、従来のメールオーダーサイズに加え、A4判サイズで文字を大きく、色についても視認性の高いものを用意している。

 振込依頼書等お客さまが記入される伝票類も「帳票マニュアル〜ハートフルデザイン対応・ヒューマンエラー防止にむけて」を策定し、「見やすい・わかりやすい・書きやすい」ものへ改訂を進めている(もちずき2008:30-31)。

 平田賢典(ひらた・けんすけ)が指摘しているように、「小さな伝票は、高齢者や視覚障害者にとって見にくいだけでなく、どこに必要事項を記入してよいかが認識できず、細かい字を書くことが苦手な」人にとっても、「不便である」ということだ(ひらた2008c:20)。

 水野映子(みずの・えいこ)は視覚障害者が代筆を拒否され「しかたなく自分で書くことにしたが、うまく書けずに何度も書き直した、字がはみ出たために再提出を求められた、といった経験をした人もいる」と報告している(みずの2009:70)。代筆拒否と記入用紙の不備という二重のバリアを経験している人がいるということだ。

 多摩信用金庫では「各種申込用紙を拡大」し、「振込用紙はA4サイズに」したという(かさい2008:28)。振込用紙は、「自分の名前は書くことができても、書き慣れていない振込先の名前や口座番号は書きづらいのではないか」という配慮によるという(同上)。このように、用紙の拡大は窓口対応の課題の一つといえるだろう。

 つぎに、タブレットの活用については『金融財政事情』2012年63(2)の特集「ペーパーレス&スマホ時代の端末革新」にくわしい。

 北山桂(よみかた不明)は三島信用金庫本店がカウンターの横に「タッチ伝票」という端末を設置したことを紹介し、そのしくみを解説している。北山はタッチ伝票の利点をつぎのように説明している。

 利用者にとって、タッチ伝票の導入による最大のメリットが「伝票レス」だ。日常的に字を書くことのない人にとって伝票記入は煩わしく、とりわけ手が震えたり、視力が衰えた高齢者にとって、小さい記入欄に細かい字を書くことは負担が大きい。その点、タッチ伝票では、顧客がタッチパネル上で直接入力していくため伝票記入の必要がない。取引の処理が可視化するため誤解が生じるリスクも減少するほか、取引後の操作履歴をタッチパネルで確認することもできる(北山2012b:15)。

 タッチパネルの導入で無人化するということではなく、必要に応じて職員が横について操作や入力を代行するため、利用者にとって負担になることはないとのことである(同上:14-15)。

 たんに職員が代読・代筆すればいいというものではなく、利用者がよみかきしやすい環境をととのえることも、重要なとりくみであるといえる。


4. 認知されていない非識字者のニーズ


 ここまで、金融業界の文献をもとに論点と課題を整理してきた。最後に、識字研究の視点から、非識字者にとって金融機関の窓口対応にどのような課題があるのか、確認してみたい。

 2章で確認したとおり、代読や代筆を必要としている高齢者もいる。それは金融機関でも認知されている。問題は、それが、なぜ、どのように必要であると認知されているのかである。

 「ケーススタディ窓口対応や手続時にはこんなサポートをしよう!」という記事がある。この記事では、つぎのようなケーススタディが例示されている。

「ケース1 肢体障がいがある方に書類の代筆を依頼された」

「ケース2 聴覚障がいがある方に住所変更手続きを依頼された」

「ケース3 視覚障がいがある方に現金の出金を依頼された」

「ケース4 視覚障がいがある方に取引書類の代読を依頼された」

「ケース5 視覚障がいがある方がATMコーナーで迷っている」

「ケース6 視覚障がいがある方から住宅ローンの申込みを受けた」

「ケース7 高齢の方が通帳等の喪失と再発行を繰り返している」(さくらもと/バンクビジネス編集部2011)

 このうち、代読や代筆について解説しているのは、ケース1、3、4、6である。ケース7で高齢者をとりあげているが、これは判断能力を問題視するものである。ただ自筆できない高齢者のことは想定されていない。

 『金融コンプライアンス5分間ドリル窓口業務編』では、「1人住まいの高齢者」に代筆を依頼された場合の対応について、つぎのように説明している。

…窓口の行職員は、手が不自由等の理由で代筆を依頼される場合もあることを想定しておく必要があります。

 同居している親族が同伴しているような場合であれば、親族等に代筆をお願いすることもできますが、1人住まいの高齢者が、代筆を依頼する親族等もなく行職員に代筆を依頼してきた場合には、法的な意味と実務的な対応を理解したうえで、上司とも連携して慎重に対応することが必要になります。

 法的には、なんらかの事情により顧客が署名できないことを理由として、行職員に代筆を求め、やむをえず顧客の意思に基づいて行職員が代筆をした場合でも、顧客本人の意思能力に問題がなく契約の意思が明確であれば、その契約は有効です。一方、顧客本人の同意がないにもかかわらず行職員が代筆をした場合は、本人からの代理権授与がないため無権代理行為となり、本人が追認しないかぎり有効となりません(民法113条)。

 実務上は後日のトラブルを回避するために親族等に代筆してもらうか、弁護士等を代理人として指定してもらい、その代理人と取引するなど慎重な対応が必要です。もし、親族の代筆や代理人の指定が難しく、行職員が代筆する場合には、手が不自由である理由や資金使途等を失礼のないように聞き出し、担当者の独断は避けて上司に相談すべきです。そして、本人の意思確認については、上司ともども必ず複数人で面談するなど通常以上に厳格に行うことが重要です。また、代筆の経緯を伝票の裏面に記載しておくことも有効です(経済法令研究会編2013:38)。

 また、『営業店リスク管理者試験問題解説集2012年度版』では「あくまで顧客自身で記入してもらうように依頼することが原則である」とし、それが無理であれば「代理人指定の依頼を検討する」だけでなく、「病や老化の進行状況によっては、本人、家族、親族等に対して、成年後見制度の利用を勧めることも検討する必要がある」としている(5)(きんざい教育事業センター編2012:143)。

 以上のように、金融業界は高齢の非識字者の存在を認知していない。しかし識字運動の文脈では、非識字者が金融窓口で代筆を依頼できるかどうかということは、とても重大な問題であることが認知されている。

 『ひらがなにっき』という絵本がある(わかいちの絵本制作実行委員会ほか2008)。絵本の本文は、吉田一子の「識字作品を基に創作」したものである(同上:「絵本にそえて」)。

 この絵本のあとがきにあたる「絵本にそえて」では、吉田の識字作品の原文を二つ紹介している。その一つが、銀行の窓口対応についてのものである。「絵本にそえて」では、つぎのように説明されている。

 実はこの時、吉田さんは、娘の順子(じゅんこ)さんに書いてもらった払い戻し請求書を持って銀行に行ったのですが、窓口で書き直すように言われ、自分の代わりに書いてほしいと頼んだのです。現在、銀行では個々に相談に応じてもらえるようになっていますが、当時おそらく規定によって書いてもらえず、結局お金を引き出すことができずに帰ってきたのでした。…後略…(同上)

 識字問題の研究者である角知行(すみ・ともゆき)は、吉田の「なまえをかいた」という識字作品を参照し、この銀行のエピソードについて、つぎのようにのべている。

預金のひきだし…中略…に銀行が要求するよみかき実践は「用紙に金額と氏名を記入する」ということである。銀行は非識字者の存在を認識しておらず、だれもがよみかきできるということを前提にして、てつづきを設定している。非識字者の存在は目にはいっておらず、銀行員は何回たのまれても「だめです」というばかりであった。作者に対して「くやしいやら、つらいやら、とてもなさけない」おもいをさせている。これをみるかぎり、銀行は非識字者に対して無知で無理解である。その背景には、よみかき能力を当然視する識字イデオロギーがある(すみ2012:197)。

 本稿で金融業界の文献を検証した結果をみても、たしかに「銀行は非識字者に対して無知で無理解である」といえる。文字のよみかきが困難であるのは老化の結果としか想定されていない。現状が把握できていなければ対策をとることはできない。日本社会には、学校教育を(ほとんど)うけることができなかった人たちがいる。高齢の、障害者、被差別部落出身者、在日朝鮮人などである(かどや/あべ2010、すみ2012)。


5. おわりに―代読・代筆をすべての窓口で


 「識字のユニバーサルデザイン」(あべ2010c)などで論じてきたように、文字のよみかきのハードルをさげるためには、さまざまなとりくみが必要である。視認しやすい書体をえらぶこと、文字の大きさや行間を工夫すること、色づかいに注意すること、印刷物をよむことになんらかの困難がある人は電子媒体で利用できるようにするなど、情報のかたちを複数化すること、わかりやすい表現をえらぶことなどである。そして、必要な場合には人の手を介して記入したり、代読をうけたりすることができるようにする必要がある。人の手を介した記入には、代筆やタッチパネルの利用などの方法がある。人間の多様性に応じた、臨機応変な対応がもとめられる。

 代読や代筆をヘルパーや情報支援員などに依頼できるようにすることは重要である。

 しかし同時に、それぞれの公共機関が責任をもって対応する体制をつくっていくことも重要である。

 『読み書き《代読・代筆》情報支援テキスト』では「読み書き(代読・代筆)情報支援とは」として、その定義と内容を説明している(大活字文化普及協会2012:54-55)。ここでは、公共機関の責任についてつぎのように説明している。

※銀行や郵便局、駅など不特定多数の住民が利用する公共的機関については、各々の専門知識に基づく対応が必要であり、各機関が読み書き情報支援に対応すべきと考える(同上:54)。

 代読や代筆を必要とする人がだれかを同伴して窓口にきたとしても、公共機関は利用者の同伴者に対応をまかせるべきではない。だれに代読や代筆を依頼するかを利用者が決定できるようにする必要がある。プライバシーを優先したいとか、時間を節約したいなど、個々のケースや状況によって要望は左右されるものである。

 今回検討した金融機関での対応では、「契約」が一つのハードルになっている。これは読書権保障協議会がすすめる情報支援員による代読・代筆でも問題化しうることであり、すでにそのことは指摘されている。『読み書き《代読・代筆》情報支援テキスト』に「代書行為と行政書士法の解説」があるのはそのためである。ここでは「リスク管理も代筆行為の技術の一つです」と説明されている(同上2012:46)。もちろん、リスク管理は必要である。しかし、それはサービス提供者と利用者の「おたがいのため」である。どちらか一方のためにあるのではない。とくに、公共機関は「リスク管理」の論理で代筆を拒否することがないようにするべきである。

 2013年6月に障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が成立した。2016年に施行される。この法律によって、施行以後は障害を理由とした「不利益取扱い」が禁止されるだけでなく、アクセス権を保障するための「合理的配慮」がもとめられるようになる。

 じっさい、障害者政策委員会差別禁止部会が2012年9月14日発表した「「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見」ではつぎのように指摘されている(6)

 例えば、銀行口座の開設や預金の払い戻し、保険の契約等において、視覚障害のため本人が記入できないので郵便局の職員や銀行員に代筆を依頼するが、断られるといった事例がある。このような場合には本人の意思確認のための代替的手段として、契約時の本人の意思確認のために契約状況をビデオ撮影してCD等に保管しておくこと等も考え得るところであり、他にも複数の職員による確認等もあり得るのであるから、何らかの代替手段を合理的配慮として提供すべきである。

 2011年に改正された金融庁の監督指針は、代読や代筆に関して社内規定を整備することに重点をおいていた。しかし、今後はこれまで以上に合理的配慮がもとめられるのであり、たんに内部規定をもうけるだけでは不十分だといえる。

 差別禁止部会の意見では、つぎのように、「障害者と配慮が求められた者の間」での協議と調停による合意形成が重要であるとしている。

障害者が実質的に均等な待遇を受けるために必要とする合理的配慮の内容は、障害の態様や配慮が求められた状況等に応じて変わるものであり、障害者と配慮が求められた者の間で協議して、その具体的な内容が確定されることが望ましい。

そのための措置として複数提供可能なものが存在する場合等においては、障害者の希望に沿った措置が取られるよう配慮されるべきだが、提供される配慮が障害者の希望とは異なる場合もあり得る。かような場合も含め、どうしても合意できない場合には、調停等の合意形成をベースとした解決の仕組みや最終的には司法の場における判断によることになる。

 現在は、全国銀行協会が運営する「全国銀行協会相談室」がある。ここに、苦情や紛争解決の申立てをすることができる。あっせん委員会も設置されている。このような相談窓口で対応を調整するための調停ができるようにする必要がある。

 全国銀行協会はウェブサイトに「視覚障がい者向けサービスに関するお問い合せ先」一覧をもうけるなど、バリアフリーにとりくんでいる様子である(http://www.zenginkyo.or.jp/inquiry/handicap/)。しかし、現在のところ全国銀行協会相談室に相談するためには、電話をかけるか、相談室を訪問するしかアクセス方法がない。ファックスやメールには対応していない。つまり、きこえない人、きこえにくい人、発話に障害のある人のことを想定していない(7)。現状では、仲介役をになう相談機関にもバリアがあるということだ。

 障害者権利条約と障害者差別解消法の時代における金融機関はどのようにあるべきなのか(8)。そのほかの公共機関の窓口は、どのように情報保障にとりくんでいくのか。ひきつづき議論と検証がもとめられるといえよう。



(1) 竹下は、代筆を必要としているのは視覚障害者にかぎらないことをつぎのように指摘している。


 金融機関の社会的な公益性や公共性を考えれば、障害・能力の有無を問わずに利用できるユニバーサルデザイン化されたサービスの提供が必要になるだろう。たとえば、代筆規定があれば、脳性小児マヒで手が震えて字が書けない人や高齢で文字がみえにくくなった人などにも通用する。障害者のための発想が、すべての人の便利さを向上させることになる(たけした2011:17)。

(2) ここで重要なのは、2012年に発行された『コンプライアンスのための金融取引ルールブック第14版』では代読や代筆に関する記述がおおきく改善していることである。第14版の記述については、2.4でとりあげる。


(3) 金融庁の「「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」というページ(http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20101228-3.html)に「主要行等向け」と「中小・地域金融機関向け」の「監督指針」一部改正(案)の新旧対応表(どちらもPDFファイル)が公開されている。


(4) 金融庁「障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果について(速報値)」

http://www.fsa.go.jp/news/25/ginkou/20130709-2.html


(5) 成年後見制度の利用については、えぐち(2011a)、やなぎだ(2008)などでも解説がある。しかし、成年後見制度の現状をふまえるかぎり、本人の権利を制限してしまう制度であるといえる。選挙権の喪失は違憲判決により撤廃されたが、まだまだ改善の余地がある。


(6) 「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」に関する差別禁止部会の意見」は内閣府のウェブサイトにPDFで全文が公開されている(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/b_4/index.html)。日本障害者リハビリテーション協会のウェブサイトではHTMLによる全文が掲載されている(http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/law/promotion/bukai_iken.html)。


(7) たとえば、無料の電話相談である「よりそいホットライン」はファックスにも対応している。また、京都府警は「メール110番・FAX110番(聴覚言語障害者用110番)」を用意している(http://www.pref.kyoto.jp/fukei/sodan/sirei/mail110.html)。まつもり(2008)、みずの(2010)、すぎむら(2013)も参照のこと。


(8) 千葉県は2006年に「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」を制定した(2007年から施行)。この条例は、「障害者差別禁止条例」として認知されている。千葉県は、2010年に「視覚障害のある人が銀行を利用する際の配慮に係る検討会」を2回開催している(http://www.pref.chiba.lg.jp/shoufuku/jouhoukoukai/shingikai/kurashi/giji/)。千葉県による『駆け抜けた1000日障害者条例3年の軌跡』でも、その成果をアピールしている(http://www.pref.chiba.lg.jp/shoufuku/shougai-kurashi/documents/siryou4-2.pdf)。今後の展望をさぐるうえで参考になるだろう。えぐち(2011b)も参照のこと。


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すぎむらなおみ2013「障害を持つ身体が性暴力被害にあったとき―マイナー・マイノリティの「つたわらない」困難」『社会言語学』13号、1-15


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中澤信(なかざわ・まこと)2008「肢体不自由者の声 まずは声をかけることから」『リージョナルバンキング』58(11)、25


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バンクビジネス編集部2011「マンガ ユニバーサルサービスの基本とお客様対応」『バンクビジネス』45(14)、9-13


平田賢典(ひらた・けんすけ)2008a「バリアフリー時代の金融機関に何が求められているか!?」『近代セールス』53(16)、10-13


 ― 2008b「一人ひとりが心がけたい高齢者やおからだの不自由なお客様への対応ポイント」『近代セールス』53(16)、30-36


 ― 2008c「バリアフリー時代に求められる金融サービスのあり方」『リージョナルバンキング』58(11)、16-24


 ― 2011「バリアフリー化はあなたが知らない不便さへの気づきから」『金融財政事情』62(9)、10-13


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 ― 2010「対面・非対面窓口の障害者等にとっての不便さ―一般消費者・聴覚障害者・視覚障害者を対象とするアンケート調査結果より」『ライフデザインレポート』193、4-15


 ― 2011「視覚障害者も安心して使えるキャッシュカード」『金融財政事情』62(9)、23-25


宮本治之(よみかた不明)2011「【聴覚障害者の声】外見からわかりにくい障害への理解とコミュニケーション手段の充実を」『金融財政事情』62(9)、15-16


武者圭(むしゃ・けい)2008「視覚障害者の声 店内誘導時や伝票記入時等のきめ細やかな人的対応を期待」『近代セールス』53(16)、16-17


望月昭人(もちずき・あきひと)2008「「ハートフルプロジェクト」でバリアフリー化を推進」『リージョナルバンキング』58(11)、28-33


森陽介(もり・ようすけ)2011a「なぜ視覚障がい者等に配慮した取組みの推進が求められるのですか?」『金融財政事情』62(5)、44-47


 ― 2011b「障がい者等向けサービス向上に係る金融機関の取組みへの期待―主要行等向け及び中小・地域金融機関向け監督指針の改正を踏まえて」『金融』771、20-25


 ― 2011c「金融機関に求められる障がい者等に配慮した取組みと態勢整備」『銀行法務21』732、38-41


柳田和晶(やなぎだ・かずあき)2008「資産管理のサポートで老後の安心を提供」『リージョナルバンキング』58(11)、40-42


山内薫(やまうち・かおる)2012「読み書き(代読・代筆)の支援をすすめよう」『出版ニュース』3 月下旬号、10-11


山本索(やまもと・もとむ)2008「「サービス介助士」とはどんな資格なのか」『近代セールス』53(16)、40-41


吉田豊(よしだ・ゆたか)2009「ゆうちょ銀行のバリアフリー対応」『金融財政事情』60(28)、76-78


吉野誠(よしの・まこと)2011「金融機関と成年後見―金融機関窓口における取引確認」新井誠(あらい・まこと)ほか編『成年後見法制の展望』日本評論社、342-356


両部美勝(りょうべ・よしかつ)2009「代筆、家族との取引―店頭での異例取引はどこまで許されるか」60(28)、72-75


若一(わかいち)の絵本制作実行委員会文/長野ヒデ子(ながの・ひでこ)絵2008『ひらがなにっき』解放出版社


渡邊博己(わたなべ・ひろみ)2008「金融機関の障害者等への対応とコンプライアンス上の問題」『ファイナンシャルコンプライアンス』38(11)、70-75


渡邉儀一(わたなべ・よしかず)2008「聴覚障がい者の声プライバシーの保護にも配慮を」『リージョナルバンキング』58(11)、27


参照ウェブページ


総務省「行政苦情推進会議の意見を踏まえたあっせん(視覚障がい者に対する金融機関職員による代筆の推進)」

 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01hyoka04_01000003.html


金融庁「視覚障がい者に配慮した取組みの積極的な推進に係る要請について」

 http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20100826-1.html


「「視覚障がい者団体と金融機関との意見交換会」議事要旨」

 http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20101001-1.html


「視覚障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果について(速報値)」

 http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20101130-1.html


「「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」

 http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20101228-3.html


「「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について」

 http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20110415-2.html


「障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査の結果について(速報値)」

 http://www.fsa.go.jp/news/25/ginkou/20130709-2.html


金融機関豊橋信用金庫(とよしん)「とよしんの取組み・目の不自由な方に配慮した取組み」

 http://www.toyo-shin.co.jp/action/hairyo.php


名古屋銀行「障がいのある方に配慮した取組みについて」

 http://www.meigin.com/info/handycap.html


八十二銀行「バリアフリーに配慮した取組」

 http://www.82bank.co.jp/hp/menu000004100/hpg000004040.htm


平塚信用金庫「障がいをお持ちのお客さまやご高齢のお客さまへの対応について」

 http://www.shinkin.co.jp/hiratuka/individual/information/info201103.html


北陸銀行「視覚障害者に対する窓口対応について」

 http://www.hokugin.co.jp/info/newsrelease/100917d.html


三菱UFJ信託銀行「お客さま満足向上への取り組み」

 http://www.tr.mufg.jp/ippan/cs/



初出:『社会言語学』13号。2014年2月19日 全文公開。


あべ・やすし (ABE Yasusi)

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