すべての人に知る権利を保障し、だれもが意見や情報をやりとりすることができるようにする。
だれも社会から排除されないようにする。
そのように目標を設定し、いまの現状と課題を整理し、将来の展望をみすえる。
2015年の初版に漢字の問題、やさしい日本語についての議論、音声メディアや動画メディアを活用した情報保障についての議論を追加した「増補新版」。
ただたんに、人に「理解されること」をのぞんでコミュニケーションをとるならば、人はだれも、間接的で「とおまわし」なことばづかいをしたりはしないはずである。だが現に非自閉者は皮肉や、ほのめかし、あるいはお世辞など、「つたえる」と「つたえない」のつかいわけを日常的にしている。「意図するわたし」のむこうには、「解釈するわたし」が存在する。人は、比喩的にはなしたり、はなしを深読みしようとしたりする。そして同時に、ことばどおりの意味で表現したり、ことばどおりに理解したりもしている。それでいつも、会話は複雑になってしまう。理解しあうことが困難になる。もし「つたえたいこと」を「つたえること」がコミュニケーションなら、社会はコミュニケーション障害であふれているといえるだろう。だれかになにかを「つたえる」だけがコミュニケーションではないのだ。
コラム3「「コミュニケーション障害」ってなんだろう」より(73ページ)
よこがき。人名漢字にはすべてよみがなをそえている。第7章と第8章は「です・ます調」。第7章は部分的にわかちがきしている。
1. はじめに──多数派には名前がない
2. 自分を「ふつう」に分類しない
3. 発達障害と定型発達(神経学的多数派)の異文化接触
4. 非連続(カテゴリー)と連続(スペクトラム)のあいだ──自閉症を例に
5. おわりに
1. はじめに
2. トランスジェンダーからみた「障害」
3. 「ろう文化宣言」と少数者としての「障害者」
4. 図書館サービスからみた「障害」
5. 相対主義からみた「損傷」
6. ひだりききからみた「障害」
7. 社会構成主義からみた「障害」
8. おわりに──「配慮の平等」にむけて
ただしがき
1. はじめに
2. 言語権という理念
2.1. ひとつの言語とはなにか
2.2. 言語権のひろがり
3. 知的障害と「言語」
4. 言語学の倫理──ジーニーを実験台にさせたもの
5. 共生の条件とされる「ことば」
6. 知的障害者をとりまく社会環境──言語という障害と能力主義
6.1. 言語と世界観
6.2. 知的障害の判定テストと言語
6.3. 能力の個人モデルから「能力の共同性」へ
7. 言語主義からの自由、そして言語権のユニバーサルデザインにむけて
8. おわりに
ただしがき
1. はじめに
2. じゃんけんのかたちをかえる
3. 「伝統」と人権
4. じゃんけんの支援技術
5. もっと多様なじゃんけんに出会うために
6. おわりに
1. はじめに
2. 自閉者と自分勝手なコミュニケーション
3. こだわりと自己決定
4. 主体性とはなにか
5. コミュニケーションに障害はありえない
6. おわりに
ただしがき
1. はじめに
2. 障害学からみた識字問題
3. 識字問題の再定義──図書館サービスの視点から
3.1. 「非識字」のとらえかた
3.2. 視覚障害者読書権保障協議会が図書館サービスの視点をかえた
4. 障害者と非識字者のちがい──みえない存在としての非識字者
5. 高齢者をめぐる識字問題
6. 読字障害/書字障害(ディスレクシア)のある人の学習環境
7. おわりに
ただしがき
1. はじめに──目的と問題意識
2. 五感(感覚モダリティ)と言語形態による整理
3. 情報保障に必要なこと
3.1. 感覚モダリティの平等(五感に配慮する)
3.2. 感覚モダリティの変換
3.3. 情報を構造化する
3.4. ユニバーサルデザインとユニバーサルサービス
3.5. 情報発信、意思表示を保障する
3.5.1. 言語障害のある人へのコミュニケーション支援
3.5.2. 知的障害者の自己決定
3.5.3. 認知症の人──オムツはずしを例に
3.6. 情報保障の公的保障
3.6.1. コミュニティ通訳の公的保障
3.6.2. ガイドヘルプ/見守り介護の保障
4. 情報保障の対象と対策
4.1. 日本語表記がうみだす情報障害
4.2. 「図書館利用に障害のある人々へのサービス」の対象範囲
4.2.1. 「図書館利用に障害のある人々へのサービス」とは
4.2.2. 情報保障の中核としての図書館
4.3. 社会的排除の視点から
4.3.1. 刑務所の問題
4.3.2. 申請主義の問題
4.4. 移民について──日本の入国管理政策の問題
5. おわりに──「あたりまえ」をひっくりかえす
ただしがき
1. はじめに
2. 言語をやりとりするチャンネル──聴覚、視覚、触覚
3. 情報のユニバーサルデザイン
3.1. 映像メディアの場合
3.2. 印刷メディアの場合
4. 言語教材のユニバーサルデザイン
5. 学習環境のユニバーサルデザイン
6. おわりに
ただしがき
1. はじめに
2. 言語ってなんだろう
3. 障害ってなんだろう
4. 言語権の論点と課題
5. 情報保障の論点と課題
6. コミュニケーション権の論点と課題
7. 生活環境の問題
7.1. 基地騒音という問題
7.2. ソーシャルワークの課題
7.3. 「よりそいホットライン」の重要性
8. おわりに
ただしがき
1. はじめに
2. 漢字をよむということ――バリアとしての「テレビ型言語」
2.1. みえない人の場合
2.2. きこえない人の場合
2.3. 視認性が不十分な日本語表記――わかちがきをしないことの問題
3. 漢字をかくということ
3.1. 音声ワープロによる漢字変換
3.2. 学校や試験の場合
4. 漢字のバリアフリーとは、どうすることか
ただしがき
1. はじめに――全体像と位置づけ
2. 『認知症フレンドリー社会』――ATMの問題を例に
3. 大学という空間の内と外
4. 中国帰国者にとっての日本語と医療
5. おわりに――単一言語主義をこえて
ただしがき
1. はじめに
2. 情報保障研究におけるテキスト・文書の位置づけと音声・動画メディアの現状
3. 書きことばがない言語、よみかきが苦手な人にとっての音声・動画メディア
3.1. 録音図書について
3.2. 手話動画について
3.3. わかりやすい情報について
4. 音声・動画メディアの活用に必要な環境整備とは
5. おわりに――これからの情報保障研究にもとめられること
ただしがき
2023年 9月23日から
あべ・やすし(ABE Yasusi)